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地元民・五十郎おすすめ 新潟の桜名所・花見スポット② 糸魚川天津神社

 暖冬対策・新潟観光振興企画、一足早い桜・花見スポット紹介の第2弾だ。がんばれ、新潟!

  地元情報を届けることおよそ30年、新潟レジャーのことならかなり詳しい私、五十郎が一足早く桜の名所・花見スポットを紹介。現地に実際に足を運んで見てきた老練ならではの話を盛り込むので、新潟県でのおでかけをぜひ、満喫してほしい。

 第一弾は超メジャースポットの高田城百万人観桜会を紹介したが、今回はマイナーながら、行けば満足度がきっと高いはずのココ。糸魚川市の天津神社で行われる「天津神社 春季大祭」、別名・糸魚川けんかまつりだ。

 毎年 4月10日・11日 、日にち固定で行われる行事のため、地域住民以外は平日開催になると行きづらいのではあるけどね。

 神社の春の大祭ということは、つまりその年のハッピーを願う祭り。糸魚川は漁業が盛んな町なので豊漁を、そして農業の豊作も祈願して開催される。天津神社のネーミングには、「天」が空からの雨と実りを、「津」は湊の無事を祈ってのものに違いない。糸魚川と言えば、冬のアンコウまつりが名物。タラ汁の知られており、深海系の魚が名産。これは、 遠くまで船を出さなくとも 急峻な海底が近海にあり、新鮮な深海魚を市場に運ぶことができるため。地形的なメリットによる産物なのだ。

糸魚川近海の水深は、深くなっている。国土交通省のサイト「重ねるハザードマップ」よりダウンロードした画像に文字を乗せた。防災、地形や歴史の勉強に役立つ、秀逸なサイトです。

 さて、天津神社春季大祭はちょうど桜の開花時期と重なり、露天商の屋台も出てにぎやかなムードに。神社ではけんか神輿の後は舞楽の奉納が行われ、とても歴史のある町であることが分かる。以下は、2010年4月10日に休みを利用して足を運んだ際の画像。少々古い写真だが、伝統行事なので基本的には変化はないはず、ぜひ参考にしてほしい。

桜と舞楽で雅なムード

  午前中は神輿をぶつけあう「けんか神輿」、午後からは舞楽の奉納というのが、春季大祭の大まかな流れ。舞楽は能生白山神社の舞楽とともに国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 ちなみに新潟県内には 国の重要無形民俗文化財 指定が4つあり、そのうちの3つが糸魚川に集中している。それだけ糸魚川は歴史の深い場所。なにしろ、奴奈川姫(ぬなかわひめ)の里である。出雲から大国主命(おおくにぬしのみこと)がはるばる求婚にやってきた、その姫だ。大国主命には、八上姫、すせり姫という、いい姫がありながら。

 えー、それ浮気じゃなーい? と問いたくなるが、そこは神話の神秘。糸魚川はヒスイの一大産地なので、出雲の豪族が貴重な石を求めてはるばやってきた、ということだろう。いわゆる三種の神器のひとつの勾玉は、ヒスイである点も見逃せない。

 また、糸魚川-静岡構造線という大きな断層が日本列島を分断する形で走っていることも興味深い。糸魚川は世界ジオパークの認定地。奴奈川姫と大国主命の子が建御名方神(たけみなかたのかみ)とする神話もあり、 建御名方神 はお隣・長野県の諏訪大社の祭神だ。日本の古代史に思いを馳せながら、地形巡りをするのも面白い。

出雲から糸魚川、そして諏訪へ。海、谷、川を辿った神々の物語を地形が説明してくれるようだ。 国土交通省のサイト「重ねるハザードマップ」よりダウンロードした画像に文字を乗せた。

 さて、天地神社の舞楽。

 極彩色の衣装、エキゾチックな仮面、そして神秘的な舞い。神様への奉納。しばし、時空を超えた旅を楽しめる、貴重な祭りだ。

古今亭志ん生の「火焔太鼓」をつい、思い出す、おやじな私。
稚児舞があるのが、この地の舞楽の特徴。
トリは蘭陵王の舞い。桜との共演が美しい。

 前後するが、下記が別の機会に訪れたけんか神輿。午前中に行われる。アマチュアカメラマンの皆さんが狙うのは、舞楽よりこちらが多いのなぜだろう? 動きの迫力があるからかなぁ?

こちらがけんか神輿。

 大祭の二日目も実は舞楽の奉納がある。

 こちらは前日とは違う古い衣装で行うため、落ち着いた雰囲気になる。神々との交信、といったムードがあって、こちらもおすすめ。

なお、こちらに周辺の温泉情報の記事をアップしたので、立ち寄りまたは宿泊にぜひどうぞ。

【すき者のあなたへ】蘭陵王コレクション

 もはや桜そっちのけ。でも祭りって楽しいし歴史も面白いんだからしょうがないでしょー。

 舞楽に魅せられたアナタは、ぜひ他の地も巡ってみてほしい。なかでも蘭陵王は各地で人気が高いキャラクターで、見比べてみると面白い。京の都を描いた絵図、絵巻、屏風絵などでもよく登場するので、楽しみはぐっと広がる。以下、蘭陵王コレクション。

 こちらは天津神社春季大祭の翌週4月24日に行われる、能生白山神社の春季大祭。同じく糸魚川市。 国の重要無形民俗文化財指定

 やはり、トリは蘭陵王。こちらはかなり長く舞う。日没まで続けるので、舞手はかなりの体力が必要。天気が良ければ、夕日と蘭陵王の共演が拝める。衣装はかなりシンプルで、他の地域とは異なる地域色が興味深い。

こちらは彌彦神社で4月18日に行われる 妻戸大神例祭 。 国の重要無形民俗文化財指定 である。 蘭陵王の装束は金色でゴージャス。

 追い出したら私、五十郎はノンストップになってしまう性分で。

 こんなところまで、旅行の体で家族を巻き込みながら足を伸ばした。山形県の慈恩寺の舞楽。蘭陵王ですな。

 糸魚川も慈恩寺も、ルーツは大阪市天王寺の林家舞楽で同じ系列である、というのが通説。大阪から林家の人が北上しながら伝えていったらしい。長い時を経て、それぞれの地域でそれぞれに変化していった、その違いを研究したら面白そうですねー。