SDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・ガバナンス)といったキーワードが、あちこちで語られるようになっている昨今。大量生産・大量消費で生活の豊かさを追求する社会はそろそろ終わりということだろう。
服や靴などのファッションアイテムや日用品、仕事のツールから趣味アイテムなどなど、身の回り品はできるだけ、長持ちする、愛用できるもので整えたいものである。
さて、前職で本を作った際、取材で訪れて強く印象に残った店、「天佑堂」。新潟市街の古町6番町にある、万年筆を扱う老舗だ。
昔ながらのタバコ屋さんのような外観の店で、おもてには喫煙スペースを設けており、スモーカーたちのプチオアシスになっている。喫煙スペースって、近頃少なくなったからねぇ。休みの日なんかは、ここでタバコを吸っている若者たちの姿をよく見かける。
創業は大正10年、あるじは3代目とか。かつては万年筆の製造を店で行っていたため、今でもペン先を調整する独自開発の機械がある。代々、受け継いできたメンテナンス技術は顧客の信頼も厚く、全国から修理の依頼が来るとのこと。
およそ百年続く店が健在で、県外客からも信頼されている。そんな話に、おやじは弱い。万年筆、欲しくなるなぁ。
文字を手で書くシーンが少なくなり、ボールペンですら出番が激減している昨今。マイ万年筆のようなグレイトアイテムは、取材時までは持ったことがなかった。万年筆って、その世界には深い沼が広がっていそうだし、ハマりやすい自分の性格を顧みて、なるべく距離を置きながら取材したつもりだったが…。最終的にやっぱり、買ってしまったのがこちら。
パイロットの万年筆、Lucina(ルシーナ)。こだわりの逸品、などではなく5千円くらいのモノ。なので、買うのも使うのもハードルは低めで、ビギナーにはよい。
「使ってみて、自分の手に馴染むものが、その人にとっていい万年筆。高価なものにこだわる必要はないんです」とご主人。なるほど、それなら素人の私でも、全然OKだなと、コロリ。
海外の有名ブランドもいいけど、ペン先の材質はパイロットが一番なのだとか。百年続く職人さんにそんなこと言われたら、もう、信じて買うしかないですよ。
さあ、一度手にすると、自分のオツムがよくなった気がしてくるので万年筆って不思議。考え事を整理したり、アイデアを練るようなときはわざわざノートと万年筆を持ち出して、一方、スピーディに情報を落とし込みたいときはスマホやパソコンでと、使い分けている日々である。