みちくさの日々ベテランレジャー

落語が見たくなって大阪・天満宮の繁昌亭へ 50歳からの人生の楽しみ方

週末は、古今亭志ん生の「富久」を聴きながら、洗濯、掃除、料理作り置き、爪切りなどをするのがルーティンになっている。「富久」以外のバリエーションとして、志ん生の「妾馬」「風呂敷」、時々、「火焔太鼓」。落語を聴きたいというより、志ん生が聴きたいのだ。毎週、同じ話を聴いても飽きないのが志ん生の魅力。味わい深いのである。

話の好みは、人情味があり、素朴な笑いが散りばめられていて、最後はハッピーエンド、そんな話。たいて、うだつの上がらないダメ人間が主人公だったりするのだが、聞いていると柔らかな心になる。なんだか近頃、世の中窮屈なので、こうした話を聴いているとおおらかな気持ちになり、人生うまくいかなくったって、「ああ、それでいいだよな」と思えたりするのである。

さて、関西に住んで4年、せっかくなので上方落語の定席を体験しておこうと、「天満天神繁昌亭」を目指した。大阪を代表する夏祭り、天神祭で知られる大阪天満宮の境内にある寄席だ。

神社への参道になっている天神橋筋商店街は、日本一長い商店街なのだとか。お気に入りのパン屋「HATSU TATSU」の天六店があるようなので、品揃えが豊富であろう昼のうちに立ち寄った。最近お気に入りのライ麦パン他を購入しておいた。パンの記事はこちら。また、商店街からちょっと逸れたところには、気になっていた、たこ焼きの名店「うまい屋」も。落語の帰りに寄ってみよう。

パンを買った後、天満宮に戻る。神社では梅まつりを開催中だ。

植物たちの彩りが乏しい冬から、春へ。梅の鮮やかな花色に、気持ちがウキウキしてくるから不思議。季節の植物っていいなあ。

繁昌亭のチケットは、セブンイレブンのマルチコピー機で前売りを購入しておいた。全席指定なのだけど、セブンで購入時に表示された席は一席のみで、なぜか一択。そのことをもぎりのおじさんに尋ねると、「そうなんです、選べないんです。ここの窓口で買うと選べるんですけど」。不思議なシステム、選べるようにしてくれるといいんだけどなあ。

繁昌亭の前、写真の右手に駐車場があるのだが、吉本の演芸場はここが出発点とか。

また、繁昌亭の設立に尽力した桂三枝(今は桂文枝)は、建物横の道路が普通のアスファルトでは“風情がない”と、石畳にすることにこだわったらしい。以前、「大阪あそ歩」という町歩きイベントでガイドさんが教えてくれた。

寄席は、やはりトリに近づくに連れて落語家のオーラが大きくなっていくのが分かり、興味深かった。落語家に限らず、人が放つムードって、面白いものだなあ。んじゃ、自分はどのよう見られているのだろう。外見をあまり気にしない性質で、鏡もあまり見ないのだが、もう60歳も目前なので、ちょっと気にして見るようにしようか。めっきり増えた顔のシワに、びっくりすることもあるしなぁ。

落語に神楽にと、たっぷり楽しんだ3時間。伝統ある文化・芸能が身近にあるっていいなぁ。また来よう。

幕が降りた後は、芸人さんたちがお見送り。

帰りは、たこ焼きの名店「うまい屋」へ。

天気がいい土曜日の夕方5時前、生地が切れたので30分くらいかかるとのこと。ブラブラ周辺を歩きながら時間を潰すことにする。

「うまい屋」の古い看板。タコの彫刻も店名も、近づかないと何が描かれているのかわからない。既に看板の機能を失っているのだが、老舗であることの証明書のようなものか。ある意味、「since」を言外に表現しているわけで、「シンサー」のみうらじゅんに番外編か何かで「審査」してほしいところ。

20分ほどして再訪したら、数人が並んで待っていたので最後尾に。たこ焼きを焼いている様子を眺めながら待った後、店内のテーブル席へ。ここのたこ焼きは、生地を複数回、流し込んで焼くスタイル。前に食べた他の店は、一回流し込んでスピーディーに仕上げていたが、ここのは何度もひっくり返しながらかなり時間をかけて焼いている。ファストフードなが、結構スローなのである。

その分、客の回転も悪くなるはずなのに、8個入りで480円。一人客の私でも4人がけのテーブル席に案内してくれた。まあ、店には4人がけしかないのだけど。正直商売ぶりに、好印象です。

たこ焼きは、ソースも薬味も何もない状態で運ばれてくる。テーブルにあるソースを好みで塗るというスタイルだ。

じっくり焼くので中も結構、火が通っている。花月の隣の有名店が、中はほとんど液状だったので、これが大阪スタイルなのかと思っていたが、人気店ゆえにスピード重視でそうなったのだろうか。適度に火が通っている方が、好みである。味は、出汁というより塩味っぽい感じ。タコの塩気かな?また、細かく刻んだ紅生姜と黄色い「何か」が中にまぶされているのだが、「何か」が何かは分からなかった。何だろう?

他店のたこ焼きを色々調べるていると、1000円近いものもあったりして、いかにも観光客目当てで食指が動かない店もある。ここは、ぶらぶら歩きで小腹が空いて、ちょっと立ち寄ってサクッと食べて、「ごちそうさまっ」と後にする、そんな、地元の人に愛されてきた店なんだろうなぁ。だからこそ、常連さんのために変わらずじっくり焼くし、480円ということなのかな。いい店です。