ワンダーみちくさ散歩がてらのパン屋巡りが、週末の楽しみになっている、ここ数週間。この日は、大阪市立図書館中之島分館に予約資料が届いていたので、周辺を散歩しながら、大阪市西区江戸堀の「ブランジェリー・タカギ」を訪ねようと思い、ブラブラ歩いたのだが。
近くまで来て、「そういえば人気店『パンデュース』のバゲット、食べてなかったな」と浮気心が芽生え、そっちを味わいたいという思いにみるみる支配されてしまい、方針転換。『タカギ』は次の機会に後回しにし、大阪市中央区淡路町の『パンデュース本町 PAINDUCE』へ。人間は、予定通りの行動などしやしない、あまのじゃくな生き物なのである。
なぜ、大阪の中心地で「淡路」町なんだろうと調べてみた。淡路島から移住した人が多く住んでいたから、との説がある様子。また、店の通りをはさんですぐ反対側にある御霊神社に、かつて人形浄瑠璃の劇場「御霊文楽座」があり、隆盛を誇ったとか。いま、日本橋にある国立文楽劇場の発祥の地ということになろうか。で、その人形浄瑠璃の創始者・植村文楽軒は淡路島の出身、とされている。すると町名の由来は、文楽軒さんにあやかったか。もしくは、御霊文楽座の開設と同時に、実際に淡路出身の人たちが多く住んだのか。
いずれにせよ、淡路島に因む町であるようだ。秀吉にちなむ地名や土地が多い大阪だが、秀吉がらみではない町名だ。人形浄瑠璃、見たことないなぁ。今度、文楽劇場に行ってみようか。
淡路島といえば、古事記の国生みの神話の地。イザナギノミコトとイザナミノミコトが混沌の世に矛を突っ込んでぐるぐるかき回して生み出した、日本で最初に誕生した島である。なぜ、瀬戸内海のこの島が最初の舞台? と不思議に感じていた淡路島。うず潮のぐるぐるが、かき回したぐるぐるとのイメージと一致したのだろうか。ここ淡路町が一度、行ってみたかった場所のゆかりの地とは知らなんだ。神がった淡路の霊力が宿る、一帯はパワースポットかもしれん。
さて、パンの話。パンデュースでアドバゲット320円とバタール1/2サイズ160円を購入。アドバゲットは低温長時間発酵、全粒粉で、小麦の風味豊か、バタールはしっかり発酵をとっているので口溶けしっとり、とポップに記されている。うむ。ふたつとも家に帰って計測するのが楽しみじゃわい。
ハーフサイズのバタールは、切り口から乾燥するのを防ぐためと思われる紙巻き状態で陳列。気遣いが好印象。また他に、惣菜系のパンも豊富。パン作りの職人さんたちが、忙しそうに働いていたのが印象的。人気店で、支店が複数あるせいか大変そうだ。
店を出て、ブラブラ散歩。店の周辺の御堂筋界隈は、レトロ建築があちこちに残る、建物好きにはたまらないエリア。予約資料本を受け取りに行った大阪府立図書館中之島の建物も、レトロ建築。明治37年に第15代住友吉左衛門の寄付で作られた図書館で、国指定の重要文化財だ。
すぐ隣の大阪市中央公会堂は大正7年創建の、こちらも国指定重要文化財。公式サイトでは、原案:岡田信一郎 実施設計:辰野金吾・片岡安 となっている。辰野金吾は東京駅も設計した、建築界のスーパースター。外観を眺めるだけでもドキドキする、かっこよさ。
「中之島アニメBOX」というイベントを開催していたので、これラッキーとばかりに内部を見学。日本の神話(?)を描いた天井絵、アールのデザインが印象的で優美なホールの柱や窓。ゴージャスな作りである。
この建物、株式仲買人の岩本栄之助という財閥でもなんでもない人の、個人の寄付で建てられたのだとか。が、相場で出した損を回復できず、建物の完成を待たずにピストル自殺で亡くなったという。裏話を知ると、作りがゴージャスなだけに人生の浮き沈み、喜びと哀しみをまとったように見えてくる不思議。いい建物だなぁ。
さらに、高麗橋野村ビルディングへ。角のアールが印象的な、不思議なデザインの建物。昭和2年の竣工。入り口部の月と竹の装飾は、何を意図しているか不明とか。設計は安井武雄という人。士族出身の軍人である父親と、全く異なる方向の「建築家」の道を選んだ、なかなかの変わり者だったとか。
このビル、いまは1階にサンマルクカフェが入っているので、コーヒーを飲みながら休憩しようと思ったのだが、ブラブラしすぎて日が沈んできたので、今日はやめ。また今度にしよう。
御堂筋は現在、「大阪・光の響宴2023」を開催中。(こちらも参考に)
イルミネーションがキラキラしており、まるで星々が輝く宇宙空間を散歩しているかのよう。
さて帰宅後は、パンを計測。
『パンデュース本町 PAINDUCE』のアドバゲット320円。
サイズ計測とハード系の弾力性がわかる動画はこちら。
長さ約48㎝。
胴回り約18㎝。
高さ約4㎝。
重さ262グラム。
お次はバタール1/2 160円。
長さ約19㎝。
高さ約6㎝。
重さ136グラム。
バゲットやバタールに、具を乗せて食べていたのだけど、パン屋巡りをするようになったら、店ごとの味の違いが気になり始めた。具を乗せちゃうと、パンの味が分かりづらくなるので、乗せずに別々に味わうようになった今日この頃。香ばしさ、塩加減、外皮の厚さと中の柔らかさやモチモチ感など、いろいろあって面白いな。